ミステリファンにお薦めの「伊集院光のでぃーぶいでぃー」

元々、ツイッター乙一さんが絶賛されていたのを見て発売時に買ったのだが、まともに観る時間がなくて(観ていたらいつの間にか眠っていたり)、先日ようやく全編を観た。
すげえ。傑作だ。


芸人たちが一致団結して、草野球憧れの「ダブルプレー」をやろうとする。
フィールドには、ノッカー、ファースト、セカンド、サード、ショートの5人。そしてファーストランナーと、ノッカーが打ってからファーストに走るための代走ランナーがいる。
4−6−3、または6−4−3でゲッツーを狙う。
みんなが連携すれば成立するのだが、この中に「スパイ」が2人いて、ダブルプレーを阻止するために動く。
ワンプレーごとに全員が集まり、協議の末に「不信任投票」で最も票を集めた人が外される。そこには補欠4人からこれも投票で1人入ることになる(補欠もスパイの可能性がある)。
ランナーはスパイが誰か知っている。MCの伊集院は知らない。
10球やって、ダブルプレーが成立すればプレーヤーの勝利。一度も成立しなければスパイ側の勝利、となる。


一球ごとに「今の××の動きおかしいやろ」など、不信感がつのり、みんな疑心暗鬼になる。
そして、衝撃の結末が訪れる。これはまさに、本格ミステリにおける「大どんでん返し」なのだ。これは恐らく、全編を通して観ないと驚けないだろう。いやあ、まさかこんなことになるとは。


芸人といっても、桐畑トール田代32、サードメン高橋など、伊集院光のラジオリスナーにはおなじみだが、一般的知名度はゼロに近い人ばかり。華のある芸人は一人もいない。さらに制作費もほとんどかかっていない(商品の「餃子の王将」お食事券10万円分くらい)。それでいてこの面白さ。いやすごいわ。


本当に、騙されたと思って観ていただきたい。

蜷川真夫『ネットの炎上力』

ネットの炎上力 (文春新書)

ネットの炎上力 (文春新書)

ネットの世論が大マスコミをも動かす力になる、という趣旨。
ただし、著者がJ-CASTニュースの人なので、J-CASTの話題が中心。もっといろいろ踏み込んで欲しかった。

石井光太『日本人だけが知らない日本人のうわさ』

日本人だけが知らない 日本人のうわさ 笑える・あきれる・腹がたつ (光文社新書)

日本人だけが知らない 日本人のうわさ 笑える・あきれる・腹がたつ (光文社新書)

春画」を見た外国人が「日本人には敵わない」と嘆いた、という笑い話から、日本で働く売春婦は日本人の子供を妊娠すれば永住権を得られる、というように問題のある話まで、外国人たちに信じられている「うわさ」を紹介している。うわさはネガティブなものが多いので、ちょっと嫌な気分にもなるが、こんな風に見られているのか、という現実を知ることは意義がある。
最後の方には、日本人たちがかつて信じていた外国人に関する「うわさ」もあって、これを読むと、外国人を笑えないと思う。「マッカーサーは日本人だった」なんて、本気で信じられていたらしい。

西成活裕『「渋滞」の先頭は何をしているのか?』

「渋滞」の先頭は何をしているのか? (宝島社新書 291)

「渋滞」の先頭は何をしているのか? (宝島社新書 291)

かつて、清水義範が「学説」をネタにしたパスティーシュ短編「渋滞原論」を発表したことがある。今では自薦パスティーシュ集『全国まずいものマップ』(ちくま文庫)で読むことができる。この短編は1992年に発表されているが、その後、渋滞学を本気で研究する人が現れた。その研究成果が本書である。
渋滞には「自然渋滞」「ボトルネック渋滞」「ダンゴ型渋滞」の三種類があるのだそうだ。こうして読むと、ちゃんとした学術研究になっているから不思議な気がしてくる。