梓崎優『叫びと祈り』

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

素晴らしい。大傑作の本格ミステリ短編集である。
ミステリーズ!新人賞」受賞作「砂漠を走る船の道」は、授賞パーティーで当時の選考委員だった綾辻さんが激賞された作品。これが冒頭に置かれ、さらに続く短編も、異郷の地で起こる事件のロマン性と驚愕のロジック・動機で唸らせる。ロシアの修道院での「不朽体」を巡る事件「凍れるルーシー」と、エボラ出血熱で滅び行く集落で人為的に起こる連続殺人「叫び」の発想が特に素晴らしい。こういう本格ロジックを読みたかった、と思わせる。
最後の「祈り」は、ややトーンダウンしてしまっているが、美しい終わり方である。