「マルチュク青春通り」(2004年韓国作品)

あのころ、子どもたちの憧れはブルース・リーだった。1978年、ブルース・リーに憧れて成長したヒョンス(クォン・サンウ)は、新興住宅地カンナムに引っ越した。転校した男子校は、先生の体罰と生徒間の暴力が日常的に存在する場所だった。ヒョンスの転入したクラスも落ちこぼれの吹き溜まりのようなクラス。転校生として最初は暴力の標的にされたヒョンスだったが、スポーツの実力が認められて受け入れられつつあった。特にウシク(イ・ジョンジン)とは親友になった。その頃、バスで通学するヒョンスは、同じバスに乗る、近くの女子高に通う三年生ウンジュ(ハン・ガイン)に一目惚れしていた。ある日、男子たちに絡まれていたウンジュをウシクとヒョンスが庇ったことをきっかけに仲良くなる。だがウンジュの存在が、ヒョンスとウシクの友情に亀裂を生み出そうとしていた……。
最初から最後まで、30年くらい前の日本の青春ドラマを観ているような、もうベッタベタな展開。だが、こういうのを観てみんな、自分たちの青春時代を懐かしむのだろうなあというのがよく分かる映画だ。当時の風俗や音楽などの使い方も巧い。「友へ/チング」や「ラブストーリー」の“昔パート”だけで全編を貫いたような雰囲気だ。もっとも日本でのメイン鑑賞層はクォン・サンウのファンなのだろうが……。ブルース・リーの映画のシーンから始まる映画は、ジャッキー・チェンの「酔拳」をこれから観ようとする場面で終わる。このさり気ない演出から「時代は移り変わるものだ」というテーマが見え隠れしているように感じた、のは、やや穿った見方だろうか。
クォン・サンウについては今更説明の必要はないだろう。それよりもハン・ガインだ。この天上的な可愛さはどうだ。写真で見るよりも、動いている方が遥かに可愛い。韓国人ぽくない顔立ちで、日本人と西洋人のハーフぽい感じ。若い頃の牧瀬里穂をも髣髴とさせる。あの目で見つめられたら、クォン・サンウじゃなくても惚れますって。