映画「半落ち」

とてもいい映画だった。一言で言うと、「実力派俳優たちのぶつかり合い」だ。メインの寺尾聡、柴田恭兵から端役に至るまで、いわゆる今の「アイドル的スター」ではなく、演技力に長けた俳優たちが勢揃いしての素晴らしい演技が絡み合い、一つの作品を作り上げている。みんな完全に物語の世界に溶け込んでいたようだった。たった2シーンしか出ない井川比佐志の強烈な存在感、法廷での樹木希林の迫真の演技、田山涼成の苦悩と悲哀など、どれもこれも素晴らしい。これだけの個性の集合体の前だと、あの吉岡秀隆ですらやや浮いてしまう(もちろん彼もいい演技をしているのだが、周りがすごすぎるのでやや不利だった)。これは是非とも観ることをお薦めしたい。
気になったのはラストの森山直太朗の唄の音量が大きすぎたこと。いきなり高いキーで入るのでちょっとびっくりする。それと、ラストの法廷場面、観ている側のモチベーションも感動も最大の高みに達しているところで、傍聴席になんと原作の横山秀夫がいたこと! 横山秀夫には大変申し訳ないのだが、思わず笑ってしまった。泣かなきゃいけない場面なのに。ミステリに詳しい人ほど、あそこで笑ってしまうと思う。