絲山秋子『袋小路の男』

袋小路の男

袋小路の男

いやー、これも良かった。特に表題作は素晴らしい。指さえ触れていない関係なのに、何年たっても、「私」の「あなた」への想いは変わらない。どんなドラマよりも映画よりも、ピュアな「純愛」を見せてもらった。「あなた」=「袋小路の男」こと、小田切孝のシニカルな内面を吐露した「小田切孝の言い分」も同じ二人を違った角度から見せて面白い。天文マニアの公務員と中学生の姪との、手紙を通じた交流「アーリオ オーリオ」も楽しめたが、え、そういうところで終わりなの? と思ってしまった。
これで「本屋大賞」ノミネート作品のうち6冊をクリアした。今年の難関は『黄金旅風』になりそうな気がする。それにしても、どれに投票するか迷うことになりそうだ。