日日日『ちーちゃんは悠久の向こう』

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

ちーちゃんこと歌島千草は僕の幼馴染みだ。ちーちゃんは怪談や幽霊が大好きで、僕をよく押入れに閉じ込めては怖い話を聞かせていた。高校に入ってからはさすがに押入れに僕を閉じ込めることはなくなったが、オカルト研究会に入って学校の七不思議を調べようとしていた。彼女の夢は「幽霊を見ること」だった。ちーちゃんは七不思議の一つ「苔地藏様」に僕を連れていった。そしてあることをした瞬間から、僕とちーちゃんの間に、大きな壁が生まれることになる。ちーちゃんは悠久の向こうに行ってしまったのか?
5つの文学賞を受賞、という話題ばかりが先行していた「天才高校生作家」日日日(あきら)がついにそのヴェールを脱いだ一作。ライトノベルらしく、ちーちゃんに萌える部分もあるが、展開はホラーのようにも見える。しかし具体的には幽霊など怪異の描写は皆無に等しい。怪異を見ているちーちゃんを見ながら激しく動揺する「僕」、という構図。二人の間には恋愛関係があるのかないのか、よく分からない状態で進む。全体としては「不器用な恋愛小説」という印象を持った。小説が不器用なのではなく、恋愛が不器用な小説なのだ。文章も若さゆえの堅さもあるがそれが逆に味になっていて、読むのに全く支障はない。
個人的にはラストだけちょっと不満が残った。あそこまで盛り上げて、その落とし方なのか。それで良かったのだろうか。
あと感想とは全く関係ない些細なことだが、個人的にツボにはまったフレーズがある。166ページ。

めでたくなしめでたくなし。

いやあ、この言葉のセンスは凄いかも知れない。いや、誰かが先にやっているフレーズなのかも知れないけれど。→(追記)結構普通に使われているようです。私が知らないだけでした。詳しくはコメント欄参照。
とりあえずもう一つの『私の優しくない先輩』も読んでみよう。