日日日『私の優しくない先輩』

私の優しくない先輩

私の優しくない先輩

私、西表耶麻子(いりおもて・やまこ)は、九州の外れの小さな島に住んでいる。病弱で脆弱な高校生だ。同じ高校の南愛治くんが大大大好きで、今日はポケットにラブレター13号を忍ばせている。なのに――今一緒にいるのは、不破風和(ふわ・ふうわ)先輩だ。私を「ヤマネコ」呼ばわりする、優しくない先輩だ。先輩はマット運動をしている。そして私にもやらせようとするのだ。この虚弱な私に。私は体育はいつも休んでいるのに。「前回り」すら出来ない私なのに、不破先輩は熱心に指導してくれた。そしてついに前回りが出来た。が――ポケットに入れていたラブレター13号を落とし、先輩に読まれてしまった。私の憂鬱はそこから始まった。でも不破先輩は、私と愛治くんを結びつけようと動き始めた……。
ちーちゃんは悠久の向こう』とはうって変わって、こちらはいたって普通の恋愛小説だ。しかしやはり「不器用な恋愛小説」であることには変わりはない。そしてこれがまた読ませるのだ。この年で女性の視点で小説を書くのはかなりの想像力が要求されるはずだが、繊細な女子高生の内面をここまでリアルに描くことが出来るのは何故なのだろうか。いや、これは女性の感想が聞きたいところだ。「女の気持ちが全く分かってない」と思われるだけなのかも知れないし。この作品のラストは素晴らしい。切なさ爆発だ。
いや、いいなあ日日日。次が楽しみになってきた。