恩田陸『ユージニア』

ユージニア

ユージニア

あの夏の日、青澤家で惨劇は起こった。一家が一度に毒を飲まされ、一人を除いて全員死亡した。かの「帝銀事件」のような事件だった。たった一人残ったのは少女、しかも盲目だった――後に『忘れられた祝祭』という本にもまとめられたこの事件を、関係者たちの証言を元に再構築していく。その日、本当に起こったのは、一体何だったのか……。
独特な装丁、不気味な雰囲気を漂わせるプロローグ、癖のあるフォント。これだけで作品世界に浸れるのだから凄い。ずっと「一体何があったのか?」という謎が継続したまま、読んでも読んでも話が進展しない。それどころか、物語世界の不気味さが増すばかりだ。その雰囲気に呑まれることこそが、この作品の目的ではないかと思えるほどだ。キーになる少女の存在感がこの小説を成立させているようだ。ラストも納得出来そうで出来ない感じで、放って置かれたような気もするし、ちゃんと落ちているような気もするし。ただ、非常に印象的な終わり方であることだけは間違いない。