日本史の常識を次々と覆した『
邪馬台国はどこですか?』に続く第二シリーズ。今回も
バーテンダー松永のいるバー「スリー・バレー」にて繰り広げられる静香と宮田の古代史論争に、来日中の教授ジョセフは魅了されっぱなし……
アトランティス大陸、
ストーンヘンジ、ピラミッド、
ノアの方舟、秦の
始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像が取り上げられ、例によってトンデモな説が登場する。作者にとっても最も得意なパターンの小説であり、全く予想外の結論が出てくるので面白いことは面白いのだが、前シリーズではまず「
邪馬台国は××にあった」などの奇説が登場して、そこから延々と論証していって、「ひょっとしたら本当かも」と思わせることに成功していたのに、今回は奇説が最後に登場してろくに論証しないうちにジョセフが感動して終わり、と唐突すぎて呆気に取られるのだ。もうちょっと証拠の提示くらいしろよ、とツッコミたくなってしまう。「だが宮田という男は、この東洋の場末のバーの空間に、
ノアの方舟の神話が生まれた原風景を現出させてしまった」(194ページ)とか単純に奇説を受け入れ過ぎだってジョセフ。ここ最近の新作ラッシュの影響で、一つ一つが薄められてしまった感が
如実に現れている短篇集だ。いや、説自体はそれぞれ面白いのよ。