津原泰水『赤い竪琴』
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/01/26
- メディア: 単行本
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大人の恋愛小説だ。著者の傾向からして、幻想の世界に引き擦り込むのではないかとか、どこかで突然死体がゴロンと転がるのではないかとか思っていたが、そのような小道具を一切使わない、実にストレートでピュアな恋愛小説だった。読んでいるこっちが恥ずかしくなるくらい(「目覚めたとき、私はすっかり恋におちていた。」―72ページ)。二人は何となくつかず離れずの付き合いが続くが、ちゃんと理由があることが判る。それを乗り越える(乗り越えているのか?)二人の愛、そしてそこに重なる寒川玄児の言葉。ああ、こういう恋の形もあるのだ。美しい文章に浸りきる小説である。