北山猛邦『『ギロチン城』殺人事件』

『ギロチン城』殺人事件 (講談社ノベルス)

『ギロチン城』殺人事件 (講談社ノベルス)

ホテル住まいの探偵・幕辺ナコ(まくべ・ナコ)と頼科勇生(よりしな・ゆうき)の二人は、人形塚に残されていた人形の手掛かりを求めて『ギロチン城』にやって来た。外も中も厳重なセキュリティで管理されたこの城には、ロシアの伝説に残る「首狩り人形」があり、かつての当主がその人形の犠牲となって死亡した(?)過去がある。どう見ても怪しげな二人の訪問を、現在の当主・道桐一(みちぎり・いち)は歓迎してくれた。しかし、二人の来訪が、この城にまた新たな連続殺人の歯車を回らせることになる――。
とても現実とは思えない舞台に、この世のものとは思えないような登場人物たち。かといって読み難くはなく、冒頭のファンタジックな挿話から独特の雰囲気作りに成功している。そしてあまりにも陰惨な連続殺人。使われるのは北山お得意の物理トリック。帯に「物理トリックの名手」とまで書かれているくらいだ。その物理トリック、図で説明されるトリックが大きく二つあるのだが、四姉妹の殺人トリックの方はちょっとややこし過ぎて、図で描かれても解り難い。やりたいことは分かるのだが……もうひとつのは一瞬で理解出来る上に、豪快でバカバカしすぎていっそあっぱれ。似たようなネタの前例はあるが、これはこれで評価したいところだ。犯人の動機がやや説得力に欠けているのが残念だが、物語世界がそもそも現実離れしているのだからなんでもありか。