矢野龍王『時限絶命マンション』

時限絶命マンション

時限絶命マンション

高校生にして、マンションの管理を実質上任されている時田恭二は、兄と共に「管理人」を名乗る謎の人物に催涙ガスで眠らされた。目が醒めた。部屋は変わりなかったが、首にネックレスのようなものが付けられ、ノートパソコンと悪魔人形が入った箱が置かれていた。「ニセ管理人」による、恐怖の時限殺人ゲームの始まりだった――。
いろんな意味で問題作の『極限推理コロシアム』から一年。次はマンションを舞台にした殺人ゲームである。6時間ごとに「悪魔人形」を所持している部屋の人物が次々に殺され、最後に残った部屋の人物たちが優勝、という設定。他人を中に入れてはいけない、参加者が外に出てはいけない、などの「ルール」も設定され、違反者も即死亡。この小説はもう、ただ派手なだけのゲーム小説だと言い切れる。サスペンス性はあるので一気に読めるが、読み終えた後には何も残らない。これだけ「主催者側」に都合のいいルールを作られると、もう勝手にやってください、って感じになる。主人公の心理描写も、殺人者になったり死者を憐れんだりと支離滅裂。いや、この状況ではそういう心理状態になる、と言われればそうかも知れないが。前作よりも進歩したのは、「主催者側」がこのゲームを行った動機設定にやや説得力が持てたことくらいか。