折原一『黙の部屋』
- 作者: 折原一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04
- メディア: 単行本
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40点以上に及ぶ、著者所有の石田黙の絵画を織り込んだ作品。その絵を見ているだけでも充分楽しめるのだが、内容は今までよりは若干トンデモ度が減っているか。とはいっても、「覆面男」が出てきたり、登場人物がストーカー的行動を取ってみたりと、やはりいつもの妙な作品世界なのだが。編集者の水島が絵画に取り付かれてオークションなどに夢中になっていく様は、著者本人の思考にかなり近いものと思われる。石田黙は実在の画家だし、エピソードも一部事実が含まれているそうなので、どこからがフィクションなのかが判り難いところもミソ。毎度おなじみの折原流トリックもあるが、さほど複雑にはなっていない。トリッキーなミステリというよりは、美術ミステリとして楽しむべきだろう。作者の意図も「石田黙という画家を知ってもらうこと」にあるような気がする。