松本修『探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子』

探偵!ナイトスクープ―アホの遺伝子

探偵!ナイトスクープ―アホの遺伝子

関西のお化け番組に立ち上げから関わったプロデューサーによる回想記。
買った当日に一気読みした。これは面白い。番組の総集編的内容(まだ終わったわけではないが)だが、映像中心に見せるのではなく、映像スタッフたちの裏舞台を事細かに書いている。番組に関わるディレクターは何人もいて、それぞれが映像作品を通じてせめぎ合っていることがよく分かる。視聴率よりも、同番組内で競争が起こっているのだ。
今でこそ視聴率は関西で平均25%は楽にたたき出す番組で、一時は32%までいった番組だが、開始当初はどんなに傑作を放送しても視聴率が低迷していた時代があった、というのは、今からすると信じられないことのように思える。
「マネキンと結婚したい女性」や「爆発卵」、「アホとバカの境界線」など、番組が生んだ傑作は数知れないが、作中、「「ナイトスクープ」の歴史が生んだ大傑作」と評されている作品がある。「おじいちゃんはルー大柴」と「素晴らしき車椅子の旅」で、私は特に「おじいちゃんはルー大柴」の回にすごく感動したので、これらが最後に採り上げられているのを見て感激してこの本を買ったくらいだ。中二の娘がTVでルー大柴を見るたびに、亡くなったおじいちゃんにそっくりだと泣くので会わせてやって欲しい、という依頼に基づいた作品だが、ルー大柴がいつものぶっ飛んだキャラを捨てて素の姿で依頼者の娘に接し、娘もごく普通に会話をして遊んでいくうち、ふと「おじいちゃんは?」と普通に訊く瞬間があって、この瞬間に後世に残る傑作になり得た作品だった。それを見ているうち、依頼者(お母さんであり、おじいちゃんの娘に当る)も、そのお母さん(おじいちゃんの妻に当る)も涙が止まらなくなる。その彼女たちまできちんとフォローするルー大柴。恐らく、タレント・ルー大柴にとっても最高傑作のひとつだったろう。
この本のエピローグで、嬉しい予告がある。「ナイトスクープ」の傑作選が、この夏と冬にDVD化されるというのだ。多数の一般人を使っているだけにソフト化は難しそうに思えるが、そのあたりもクリアされたのだろう。これはマストバイ・アイテムになりそうだ。今から楽しみだ。