小路幸也『HEARTBEAT』
- 作者: 小路幸也
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/04/25
- メディア: 単行本
- クリック: 20回
- この商品を含むブログ (73件) を見る
上のストーリーの「ぼく」こと裕理(ひろまさ、またはユーリ)の家の幽霊騒動と「僕」こと原之井の失踪人捜しの話が交互に語られていく。世代も舞台も違う二つの話がどう繋がるのか、という興味もあるが、特に原之井パートでは青春時代の話やニューヨーク時代の話など、様々なエピソードが重なって人物像が徐々に浮き彫りになっていく。中盤でさり気なく語られる、タイトルでもある「ハートビート」の話がクライマックスで重要な意味を持つようになる。そしてラストで待ち受ける「奇跡」。切ないけれど、暖かい。巡矢やエミィなど、彼らを取り巻く人々も素晴らしい。ストーリーテリングも明らかに巧くなっている。デビュー以来作者が書き続けてきた路線の到達点と言えるだろう。「いい話」を読みたい人にお薦めだ。今回もプッシュさせていただきます。