佐藤友哉『子供たち怒る怒る怒る』

子供たち怒る怒る怒る

子供たち怒る怒る怒る

佐藤友哉の小説を読むのは実はまだ二作目だ。その『クリスマス・テロル』がやたらにネガティブな話だったので、もう書かないのかなあとその当時思っていたものだが、純文学方面に活路を見出している模様。これは「新潮」に掲載された作品を中心とした中短篇集で、予想以上に読みやすくてなんだかやけに面白い。洪水という事象を通じて自己完結を得る「大洪水の小さな家」、9歳で死んだ少女がエンバーミングされ、腐敗しない状態のまま様々な人に弄ばれていく「死体と、」、突然大量殺戮を始めたクラスメートたちが、人質を盾にしながら何も要求しない「慾望」、連続殺人鬼「牛男」を利用したゲームに興じる子供たち「子供たち怒る怒る怒る」、雪に埋まっている極限状況で、人形に希望を見出そうとする「生まれてきてくれてありがとう!」、強姦や虐待される時に「人形」になって逃げる女の子が戦いに挑もうとする「リカちゃん人間」の6作。最後のはやたらにいやーな話だが、とりあえず救いがある(ようなないような)ラストなので、まだこの作家は書き続けられるだろうと思った。個人的には「慾望」の不条理さが好きだが、「子供たち〜」のぶっ壊しっぷりも凄い。それぞれ強烈な勢いがあるけれど、楽しい話なんてひとつもなく、どれもこれも相変わらず後ろ向きでネガティブな文学だ。それにしても妹が好きなのだなあ、ユヤタン