米澤穂信『愚者のエンドロール』

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

折木奉太郎ら神山高校古典部の面々は、夏休みでも文化祭に出品する文集『氷菓』の編集作業にに余念がない。そんな時、千反田えるの提案で、2年F組が自主制作しているビデオ映画の試写会に行った。廃墟をロケに使用した、館もののミステリ映画だ。だが映像は、密室殺人が発生したところで中断していた。脚本を担当した本郷真由が、途中までしか書いていない状態で病に伏してしまったのだ。その映像を千反田たちに見せた入須冬実は言った、「……あの事件の犯人は、誰だと思う?」
途中までの映像から、真相を予測する物語で、ここから数々の「推理」が登場しては否定されていく。そう、バークリーの『毒チョコ』のパターンだ。とはいえ、中盤まで提示される説はちょっと説得力に欠けるような気がして、その面ではやや物足りない。奉太郎の推理は(綾辻行人の短編にもあったネタだが)確かに最も意外性のあるものだ。だが本作のメインはもちろんそこではなく、その後の「真相」にあるところがミソ。それぞれの人物への優しい視線がいいね。