本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ05』

毎年恒例の本格ベストアンソロジー。ハイレベルだった去年に較べればややパワーダウンの感は否めないが、それでも面白く読める作品が収録されている。「この短編を読めて良かった」と思える作品にも出会えたので、収穫はあったと思う(どれがそうとは言及しないが)。「本格短編ベスト」の投票もある関係で、軽く流すようにミニコメ。
「大きな森の小さな密室」(小林泰水):元々犯人当て短編として書かれたので、合理的論理で犯人が指摘できるように作られている。あ、本格はそれが当たり前か。
「黄昏時に鬼たちは」(山口雅也):先入観を利用した某トリックなど、巧く処理されているが、この手にも飽きてきたかなあ。
「騒がしい密室」(竹本健治):ラノベ風。
「覆面(マスク)」(伯方雪日):覆面を利用した人物トリックと、プロレス的な観念の犯罪が面白い。
「雲の南」(柳広司):とんち問題っぽいが、その後の動機が巧い。
「二つの鍵」(三雲岳斗):時代物なのに読みやすい。トリックも単純なのに唸る。
「光る棺の中の白骨」(柄刀一):ワンアイデア小説だが、意外性と合理性を兼ね備えている。まあ実際にやろうとすると難しそうだけどねえ。
「敬虔過ぎた狂信者」(鳥飼否宇):解説にも書かれている通りだが、犯人側の作為だと思われていたものが実は……的な真相にはウケた。さすが逆説。
木乃伊の恋」(高橋葉介):えーと、これも本格になるのでしょうか……。作品自体は楽しめた。


これでようやく自分もここに投票できます。10名様からいただいています。私が投票して11名になります。