シオドア・スタージョン『輝く断片』

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

河出の「奇想コレクション」としてスタージョンの第二作になる短篇集で、晶文社の『海を失った男』も含めて、スタージョンが立て続けに翻訳されたことになる。それだけ再評価されたことになろうと思われる。私はスタージョン=「難しい作家」のイメージがあって、なかなか集中して読めなかった(『海を失った男』も難しさばかりが印象に残っている)のだが、完成度は高いものばかりだった。まさに「奇想」とも言うべき妙な話ばかりだが、実は主人公はごく普通の人のものが多くて、ほんのちょっとしたきっかけで凄いことになってしまう展開になるのが面白い(「ニュースの時間です」や「ルウェリンの犯罪」がそれにあたる)。「取り替え子」の“喋る赤ちゃん”ブッチのキャラも面白すぎだし、「君微笑めば」のどんでん返しは最高。そして「マエストロを殺せ」の絶妙なプロットは、短編ミステリ史に残るべきだと思う。嫉妬心から殺したはずのラッチの幻影に苛まれた末のラストの衝撃。いやあ、すげえや。惜しむらくは旧訳題の「死ね、名演奏家、死ね」が残らなかったことくらいか。