歌野晶午『女王様と私』

女王様と私

女王様と私

数馬はオタクだが、引きこもりじゃない。いつも妹の絵夢を連れて、出かけている。だがある日、日暮里で出会った「女王様」が数馬の全てを変えてしまった。
ストーリーの紹介が全く出来ない作品だ。だが物語は序盤から飛ばしてくる。読者を騙し、翻弄するテクニックに溢れているので、気持ちよく騙されながら一気に読み進むことが出来るのだ。後半ではさらに思いも寄らぬ方向に転がる。落しどころこそ予定調和的だが、何冊もの本を一度に読まされたような読後感は、そうは味わえないだろう。これは読了した者同士で話し合うといろんな発見があるかも知れない。それと、これは私も後で知ったことだが、カバー見返しの数馬と絵夢のオタク会話部分にも実は意味が隠されているので、必ず読み返してみること。