貫井徳郎『悪党たちは千里を走る』

悪党たちは千里を走る

悪党たちは千里を走る

高杉は詐欺師だ。今日も「徳川埋蔵金が見つかったが、掘り起こす機材がないので出資して欲しい」というネタで成金男から金をせしめようとしていた。が、「ルノアールリトグラフ」を売り付けに来ていた女がそこにいて邪魔に入られてしまった。やっぱり園部を一緒に連れていたのは間違いだった。こいつはカード詐欺時代にヘマをして以来、高杉にとっては疫病神なのだ。が、その園部が新たな金策を高杉に持ちかけた。誘拐をしないかというのだ。いくらなんでも子供を誘拐するのは危険すぎるという高杉に対して園部は「犬ッスよ」と答えた……。
ここまでで、400ページある小説のまだ35ページだ。高杉・園部の二人に、ルノアールを売りに来ていた女・菜摘子と、「ある人物」が加わって、壮大な詐欺計画が持ち上がることになる。が、それも「ある事件」が起こって路線変更を余儀なくされる、という具合に、中盤までは話がどんどん変わっていくので、全く飽きることがない。メインは誘拐事件だが、身代金受け渡しに斬新な方法が取られていたりするなど、ミステリ的にも楽しめる。ユーモア性も充実していて、読後感も爽やか。最後まで楽しませてもらった。小説を読むことの楽しさが実感出来る作品だ。お薦めッス(園部風)。