牧野修『記憶の食卓』

記憶の食卓

記憶の食卓

名簿屋」にいる折原のもとに新たに持ち込まれた謎の名簿。そこには自分の個人情報が載っていた。ところが驚くべきことに、最近起こっている奇怪な連続殺人の被害者の名前もまた、この名簿に記載されているのだ。自分も殺されるのか? そもそもこの名簿は一体何なのか? 調査を進める折原を襲う、ある食事風景の記憶……。
「殺人名簿」の謎がメインだが、カットバックで挿入される「遠藤悟一の憂鬱」が一見全く関係なさそうな話で、一体これはどっちに主眼を置けばいいのだろう、とか考えていた。「食べる」という生理現象に怪奇性を見出そうとしているようで、その辺が段々怖くなってくるあたりから、二つの物語も繋がり始める。うーわー、やっぱりそんな話かー、うげー、という展開を見せるのに、最後で突如本格ミステリぽくなってびっくり。と安心していたらラストが……な話で、特に最後の「振り幅の大きさ」が素晴らしい。やっぱり牧野修牧野修だなあ。ホラー属性な方にもミステリ属性な方にも楽しめる作品と言えるだろう。
(この感想はゲラを読んでのものです)