伊坂幸太郎『魔王』
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/20
- メディア: 単行本
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「魔王」「呼吸」の中編2作からなるが、とりわけ「魔王」は伊坂幸太郎の最高傑作だ。この異様なまでの緊迫感と息苦しさは今までの伊坂作品には見られなかったものだ。後半からラストにかけては、読んでいる方も倒れてしまいそうだった。政治的要素が高く、今年の衆議院選挙の結果を予見していたかのような話で発表時期も絶妙(というよりは微妙)。問題作と言われるのも頷ける。今までの作品にも時折垣間見られていた伊坂の黒い部分が全開になったようだ。例によって小道具の使い方が実に巧く、宮沢賢治の詩が輝いているようだった。声に出して読むべし。もうひとつの「呼吸」は、「魔王」の5年後という設定で、潤也と結婚した詩織の視点で描かれた静かな物語。こちらも読ませる部分はあるものの、「魔王」の長大な「後日譚」という印象は拭えない。
(この感想はプルーフを読んでのものです)