霧舎巧『八月は一夜限りの心霊探偵』

シリーズ5作目は伊豆の別荘地を舞台に、「呪い」による殺人と死体(?)移動の謎がメイン。他にこの「霧舎学園シリーズ」の本そのものまでトリックに織り込まれている。この「本」にまつわる仕掛けは、なんとなく予想が付いていた。だって『七月』と『八月』は同時発売だったはずなのに、××が違うのだから。それでも、こういうところまでトリックに使うメタ振りは実にユニークで、高く評価したい。ただし全体のストーリー展開やトリック等が緩いので、いまひとつ乗り切れなかったか。思うのだが、霧舎学園シリーズに使われるトリックって、横溝正史のジュニア物に近い雰囲気を感じるのだが。目の肥えたマニアにはやや辛いものがあるという点で。