田代裕彦『シナオシ』
- 作者: 田代裕彦,若月さな
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2005/12/10
- メディア: 文庫
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『キリサキ』に続いて、タイムスリップ要素を含んだミステリである。《私》として蘇った《僕》は、かつての《僕》が誰なのかを知らないので、まず《僕》を探さなければならないところから始まる。しかも《僕》による殺人を阻止するのが目的なので、事件が起こる前に、犯人になる予定の《僕》を特定しなければならないのだ。このアイデアは秀逸だと思った。ただし、解決編でテンションが落ちてしまう。すごくよく考えられているのは分かるのだが、『キリサキ』同様複雑すぎて、正直言って真相などどうでもよくなってしまうのだ。この種のトリックの見せ方を間違えているような気がする。もっと単純明快にした方が受けると思う(単純明快にするとネタが割れやすいリスクはあるだろうが)。全体構造は、フランスのミステリ作家の某有名作品を想起させる部分があって好感は持てる。『キリサキ』も『シナオシ』も、ベクトルがほんの少しずれているだけのように感じるので、そこが修正出来ればすぐに大傑作が生まれるに違いないのだ。