道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

夏休みが始まる日。ミチオは休んでいるS君の家に宿題とプリントを持っていくことになった。だが、S君の家でミチオが見たのは、天井からぶら下がっているS君の姿だった――首が長く伸びていた。部屋の外には向日葵が何本も立っていた。ミチオは学校に戻り、先生に報告した。しかし、先生が行くと、S君の姿はどこにもなかったという。そして一週間後、S君がミチオの目の前に現れた。姿を××に変えて……。
なるほど、これは説明し難い小説だ。それでも序盤はまだ、姿を変えたS君が自分を殺した犯人を告発する話だから説明しやすい。そこから話がどんどん変わっていって、物語の雰囲気自体もその都度ガラリと変わってしまう。中盤はとにかく嫌な話なのだが、後半は不条理なのに論理的な世界になって、事件もきちんと解決しながら、ホラー(というかファンタジー)部分でも深い余韻を残すことになる。バカミス紙一重なのに、ギリギリのところで踏みとどまっているような作品世界。読んでみなければ分からないとしか言いようがない。どんなに変でも我慢して最後まで読んでください、とだけ言っておきたい。