折原一『グッドバイ 叔父殺人事件』

一平は、叔母の中西智恵から、叔父が死んだことを知らされた。叔父の四郎は、ネットで知り合った者同士4人による「集団自殺」で車の中で死んでいたのだ。だが、主催者らしい女だけが意識不明ながらも生き残ったらしい。叔母は、叔父の死に不審感を抱いていた。これは自殺に見せかけていた殺人だったのでないか、一平は集団自殺の関係者の周辺を探り、怪しい者がいなかったかを調べることになった――私はミホという女性に出会った。集団自殺の主催者だ。私は「これから自殺する人たちに取材する」という、前代未聞のルポルタージュを計画していた……。
「ネットで仲間を集って車の中で集団練炭自殺」事件を中心に、その前後の記述から事件の全貌を明らかにしていく作品。全体構造も登場人物の心理描写も、いつもと変わらぬ折原一だが、今回はさほど複雑になっておらず、ストーリーも真相も解り易いので楽しめた。解り易いということは、つまり「真相が読めてしまう」わけで、著者がやりたいことには気付き易くなっているのが欠点といえば欠点。それと、この作品にとってはさほど重要ではないことではあるが、ラストで明かされる「動機」には脱力。そんな程度のことで、あの人物は殺人をし、あの人物は自殺に巻き込まれたのか。笑ってしまった。