直木賞受賞記念・マイフェイバリット東野圭吾10作

野性時代」2月号が奇しくも東野特集で、本人による全作品の解説が掲載されている。それによると『容疑者X』までで57冊発表されている。角川文庫で出た『さいえんす?』を加えれば58冊。うち私が読んでいるのは41冊。とりわけ『名探偵の掟』以降の小説は全て読んでいた。だが実は昔「読まず嫌い」だった時期もあって、初期名作は読んでいないのも結構ある(具体的に挙げると『宿命』『変身』など)。そんな私だが、ここで東野圭吾の個人的ベスト10を挙げておきたい。『秘密』系や『白夜行』系、あるいは『容疑者Xの献身』など、超メジャー級をあえて外し、「それらから入った人が次に読むべき作品」を念頭に置いてみた。順位は付けずに、刊行順に10作挙げる。


放課後 (講談社文庫)

放課後 (講談社文庫)

言わずと知れた乱歩賞デビュー作。だが実は読んだのは割と最近*1。当時にしては斬新な動機設定で、むしろ現代の方が「ありそう」な話になっている。「早過ぎた作品」だったかも。当時ドラマ化された記憶があるが、この動機部分はどう処理したのだろうか。
眠りの森 (講談社文庫)

眠りの森 (講談社文庫)

私の東野ベスト1。「これで泣けない人は人間じゃない」と口癖のように周囲に言っている。
鳥人計画 (角川文庫)

鳥人計画 (角川文庫)

スキージャンプ界の裏を描いたサスペンスと言えるが、ミステリ的な構成も凝っている。
ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

二度と使えない一発ネタ。こんなトリッキーなのも書いているのだ。
どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

これは発売当時衝撃だった。今でこそ「犯人が明記されていない小説」だということは読む前から誰でも知っているが、当時はそんなこと知る由もなく、「二人に一人の犯人当てだな」と思いながらぼんやり読んでいたらラストで犯人名が書かれていないことに驚いた。「犯人は読者が推理しなければならないのか!!」と慌てて読み返した。再読を「強要された」数少ない作品。
悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

事件は単純で、すぐに解決したように見えるのに、その後の展開が凄かった。
超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

超・殺人事件―推理作家の苦悩 (新潮文庫)

ギャグ路線ではこれか『名探偵の掟』が好きだな。
手紙

手紙

未だにこれで直木賞を獲れなかったのが不思議な作品。ラスト1ページは泣いたなあ。
殺人の門

殺人の門

これも大傑作だと騒いでいたのに、周囲の評価が低くて困惑した覚えがある。暗くて嫌な話で、読んでても楽しくないと言われたが、これはそういう小説なのだから仕方がないのだ。少なくとも私はこの主人公にシンクロしてしまい、私も「彼」に殺意を感じた。そういう趣旨の小説なのだ。
さまよう刃

さまよう刃

愛する娘が無残に殺されたら、復讐のために殺人をしてはいけないのか。シンプルながら難しいテーマに真っ向から勝負した作品。


他にも、東野が「新本格」に挑戦した(ように当時見えたが、自作解説によると綾辻が登場する前から考えていたらしい)『十字屋敷のピエロ』、東野本格ブレイクのきっかけになった本格パロディ『名探偵の掟』、RPGのように進行する『むかし僕が死んだ家』なども捨て難かった。

*1:同時受賞の森雅裕モーツァルトは子守唄を歌わない』は出た当時すぐに買って読んだ。