鯨統一郎『パラドックス学園 開かれた密室』
- 作者: 鯨統一郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/01/21
- メディア: 新書
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (50件) を見る
鯨統一郎にはいつもげんなりさせられて、「またしょーもないもの書きやがって」と毎回毒づくのだが、今回は悔しいけれど面白い! いや、しょーもないのはいつも通りなのだが、初めから荒唐無稽な設定なので許せてしまうし、その設定も笑えるのだ。残念ながら、「(今まで)存在しませんでした」と書いている犯人像には複数の前例があるし、メイントリックも某有名作品に酷似しているので、大きな減点になってしまう。のだが、ただの小ネタだと思われていた「××××××」までトリックに組み込んでいるのもまた笑ってしまった。ラストでは(これは書いてもいいと思う)、世界的ミステリ作家たちがこぞってパラパラを踊っちゃうのだ! こういう乗りで和みたいから、懲りずに鯨統一郎を読み続けているのだろう。傑作などとは口が裂けても言えないが、バカバカしいほど面白いことだけは保証しよう。
どうしようもなく笑えるシーンは数え切れないが、うち一つを引用させていただく。これからシェルターに入ろうとするカーと、鍵を渡すルブランの会話だ。
「どのくらい入っているつもりだ?」
「そうですね。一、二時間ぐらいでしょうか」
「そんなに瞑想するつもりかい?」
「ええ。密室について、考えをまとめたいんです。密室の分類をしたいんですよ」
「そうか。ではその分類が完成したら、密室講義をしてくれ」
「わかりました」
ええ、そんなに簡単に完成しちゃうのかよ、みたいな。