大倉崇裕『丑三つ時から夜明けまで』

丑三つ時から夜明けまで

丑三つ時から夜明けまで

殺人が発生したのに部屋は完全な密室で、誰も出入りできない。こんな時、事件は「幽霊」の仕業ではないかということになる。過去に亡くなった人物の「復讐心」が強い場合、その霊の力が殺人にまで達するのだ。そうして試験的に置かれている特殊捜査課「捜査五課」の奇妙な面々が現れる……七種(しちぐさ)をはじめ、難しい名前だらけの捜査五課と、本来の殺人捜査課・捜査一課との衝突もあるなど、高いリーダビリティーを維持しながら、事件は合理的な解決と霊的な解決の双方を見せて、最終的に「第三の解決」を提示する。その落しどころも面白い。捜査五課のキャラ立ち振りも楽しいし、軽く読める連作短篇集だ。あえて言えば、その「軽く読める」に止まっていることがマイナスか。最終話の着地点は、あーやっぱりそういう話にするよねー、な感じか。