平山瑞穂「忘れないと誓ったぼくがいた」

忘れないと誓ったぼくがいた

忘れないと誓ったぼくがいた

今ぼくの手元には、一本のDVCテープがある。「絶対消すな!!」と書かれたそのテープには、女の子の断片的な場面しか残っていない。でもこれが、「織部あずさ」という女の子について残された全てなのだ――高校3年生のぼくが初めて織部あずさに出会ったのはメガネ屋だった。その後、あずさが同じ学校の後輩だと知った。あずさの提案で二人で学校をサボって遊園地で遊んだりもした。だがその最中で、あずさはいなくなった。いや、正確には少し違う。ぼくの記憶が一部分消えているのだ。やがて、あずさはぼくに信じられない話をした……。
「泣ける」小説であることは間違いない。男性視点でも、女性視点でも、切なくて哀しい物語で、どっちに感情移入しても泣けるだろう。ありがちな「記憶が無くなっていく」だけではない、SF的な設定は確かに巧い。が、その後の展開に全く捻りがなくて、ほぼ予定通りに進行し終わってしまうのは残念に思った。変な展開ばかりを期待し予想してしまうミステリマニアにはやや厳しいか。逆に言えば、余計な要素を削ぎ落として小説として綺麗に纏められているということでもあり、その点ではよく出来た作品だと言える。もっと一般に売れてもいいと思うのだが。