伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

陽気なギャングの日常と襲撃 (ノン・ノベル)

あの天才的ギャング4人組が帰ってきた。人間嘘発見器・成瀬はマンションの屋上で刃物を持っている男を目撃しながらも、そこから予想外の事件を解決させ、演説の達人・響野は「幻の女」を探すことになり、正確な体内時計の持ち主・雪子は同僚に贈られた謎の演劇チケットの謎を追跡し、スリの天才・久遠は突然見知らぬ男に殴られた人の謎を追う。そしてまた4人組は一同に会し、銀行強盗を無事成功させるのだが、その時目撃した女性から、事件は4人を巻き込んで思わぬ方向に……。
伊坂幸太郎にとってはっきりとした「続編」にあたる作品を書くのは、これが初めてだそうだ(その点に関して「あとがき」でびっくりしたことがあったのだが、それはまた別の話だ)。あの4人組が帰ってきただけでも楽しいのに、またもこんなに読者を楽しませてくれるとは。前作が映画になったので、4人のキャラはそれぞれ映画のキャラでどうしても読まれてしまうし、そうでなくてもシリーズ物だから多少手を抜いたってファンは喜んでくれるものだと思うのだが、手を抜くどころか、さらに複雑なプロットを見事に融合させている。最初の4人それぞれの事件は元々別の短編として書かれたもので、それを長編の第一章として組み込むなどという芸当が出来てしまうところが凄すぎる。しかもこの4つの事件が後半に絶妙に絡むのだ。我々は伊坂の巧さをまたしても確認してしまったのだ。また続きを書いてくれないだろうか。