古処誠二『遮断』
- 作者: 古処誠二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/12/20
- メディア: 単行本
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古処誠二がミステリから離れ、戦争小説を書くようになってからちょっと敬遠していたのだが、今回直木賞候補になったのを機に読んでみた。純文学だと思っていたが、ここでもミステリ的な要素が少なからずあることに感心させられた(あまり大きな仕掛けではないが)。「手紙」を一文ずつ挿入していくことによって効果を上げており、ラストでは最初の段階で読者が予想していたのとはまた別の感動を得るのだ。沖縄戦の悲惨さ、無残さがリアルに描かれる(比較すべきではないかも知れないが、例えば福井晴敏はエンターテイメント性が高すぎるように感じる)と同時に、主人公・真一の複雑な境遇が伝わってくる。戦争を知らない世代の作者が、ハイレベルな戦争小説を次々と発表し続けていることには恐れ入るしかない。