石田衣良・中田永一・中村航・本多孝好・真伏修三・山本幸久『LOVE or LIKE』

LOVE or LIKE

LOVE or LIKE

昨年の恋愛小説アンソロジー『I LOVE YOU』が話題になったので調子に乗って第二弾が出た。全体のクオリティは去年の方が高かったと思うが、中田・本多作品が頭ひとつ抜きん出ており、この2作だけでも十分読む価値はある。装丁は今回の方が良くなったと思う(去年のは痛みやすかったし)。以下ミニコメ。
石田衣良「リアルラブ?」:いかにも石田衣良が書きそうな恋愛小説だなあと。
中田永一「なみうちぎわ」:やっぱり巧い。去年の作品を読んで感動した人ならこれも感動するだろう。ただ、基本設定に無理があるのが気になる(植物状態からそんなに簡単に復帰できるものなのか?)。恋愛小説の書き手として注目されていくのは間違いない。出来れば書き下ろし長編を書いて欲しい。
中村航ハミングライフ」:イラストを挿入するのはある意味卑怯な手だが、それが効果を上げている。しかし進行がもったりしすぎ。読みながらイライラしてしまった。
本多孝好「DEAR」:個人的にはベスト。女性が読むとまた違った感想になるだろうが、男が読むと切なくなる作品だと思う。主人公たちの気持ちがすごく伝わってくるし、自分につい置き換えてしまうのだ。もし私の初恋の人が……だったら、一体どう感じただろう。
真伏修三「わかれ道」:中田永一に続く第二の覆面作家。正直、恋愛小説を書き慣れていない人だろうと思う。いたって普通な作品だが、文章が洗練されていない気がした。
山本幸久「ネコ・ノ・デコ」:これは恋愛小説とは言えないような……。注目の若手作家で、初めて読んだ作品だが、最初がこれだったのは不運だったかも。