貫井徳郎『空白の叫び』

空白の叫び 上

空白の叫び 上

空白の叫び 下

空白の叫び 下

3人の中学生がそれぞれ複雑な環境の中で、ついに人を殺すまでになる第一部、少年院での壮絶な日々と3人の出会いを描く第二部、社会復帰するものの「殺人者」の負い目から抜けられず、再び出会った3人がある「計画」を実行に移す第三部の三部構成。とりわけ第一部の少年たちの心理描写が凄まじいなんてもんじゃないくらい凄い。特に久藤という少年の内面描写は、中学生の心理状態とは思えないくらい成熟している(世の中を冷めた目で見据えている、というべきか)。殺人を犯す瞬間の描写などは、空恐ろしいほどだ。少年院で繰り広げられける「虐め」の描写も凄い。第三部はちょっと方向性が変わってくるのと、3人の実行する「計画」が(この3人が集まってやる割には)陳腐なのが気になるが、読み応えは充分だ。そしてラストにも驚かされる(こういう意外性を入れてくるのは、本格ミステリ作家の業のようなものか)。犯罪者の心理を取り上げて来た『殺人症候群』などの路線の集大成または到達点ではないだろうか。これで直木賞、確定のような気がするのだがどうか。(←11/19の日記にて書いた理由により、この文章は削除させていただきます。関係者各位にお詫び申し上げます。)