高山文彦『麻原彰晃の誕生』

麻原彰晃の誕生 (文春新書)

麻原彰晃の誕生 (文春新書)

熊本の盲学校に学んだ松本智津夫は、何故「麻原彰晃」となったのか。彼の半生を追いながら、誰が、そして何が麻原に影響を与え、かのサリン事件を起こすほどの危険な団体を指揮したのかを探る一冊。
本として纏まったのは昨年(2006年)だが、実際に執筆・連載されたのはほとんどが1996年の「現代」である。まだ事件の記憶が新しい頃に書かれただけあって、生々しく、今となると懐かしい記述も多い。
教団がいかに大きくなって行ったか、よりも、麻原個人の足跡を辿ることに重点が置かれていて、かつての報道当時にはあまり知らされなかった発見もある。盲学校時代に児童会長選挙に立候補しながら落選したとき、「ぼくには人徳がなか」と言ったという。ここが全ての出発点だったのか、と思えるようなシーンである。「彰晃」の名付け、「真理教」の命名の経緯などもこの本で初めて知った事実である。