歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社ノベルス)

密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社ノベルス)

自分たちの素性を隠し、ビデオチャットに興じる5人。彼らが楽しむのは、推理ゲーム。ただし、事件は全て実際に起こった殺人であり、その出題者自身が犯人なのだ。解答者はその事件の話を元に、ミッシングリンク、密室の謎、アリバイ崩し、などに挑むことになるのだが……。
ネットを使った殺人ゲーム、という時点で、その正体に関して何らかのトリックがあるのだろうとは容易に想像がつくし、実際そうなのだが、なかなか巧妙に出来ていて驚かされる(このくらいは書いてもネタバレというレベルではないだろう)。それぞれの事件もまた、人を食ったトリックというか、まともに書くとあまりにも荒唐無稽に思われるようなネタを使っていて、バカバカしくも笑える。着想しても現実性に欠けたためボツにしたネタを一気に注ぎ込んだような作品、と思えなくもない。次の被害者を予想させる「次は誰を殺しますか?」、事件発生時にベトナムにいたアリバイ崩し「ホーチミン浜名湖五千キロの壁」、用意周到な犯罪劇「求道者の密室」、意外な犯人像と意外な被害者が待ち受ける「密室でなく、アリバイでもなく」が良かった。最後の話は、一体どう解釈すべきだろうか?