森見登見彦『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女

京都の大学で、オモチロイ経験を重ねて大学生活を満喫する「黒髪の乙女」と、彼女との恋愛を妄想して出会いを求めて追いかけ続ける先輩の涙ぐましいまでの努力。魅力的なキャラクターたちと共に奇妙な出来事が次々と起こる。果たして先輩の思いは彼女に伝わるのか？
ひゃっほーい。面白ーい。
以前アンソロジーで本書第一章にあたる「夜は短し歩けよ乙女」を読んだが、その時はピンと来ていなかった。実は森見初体験だったこともあり、戸惑っていたのかも知れない。今回読んでみて、その文章力の面白さ、ストーリーの愉快さ、マンガのような奇想と展開、どれもがツボだった。例えば第二章では、古本市で、彼女と彼が同じ本に手を伸ばすところから恋を始めようとするのだが、その目的を果たすためだけなのに、物語はどんどん変な方向に進む。全くヘタレな奴よ、と思いながらも、楽しんでいる自分がいるのだ。いやあ、これは京都恋愛小説の傑作である。必読。森見の他の作品も俄然読みたくなったぞ。