中川右介『カラヤンとフルトヴェングラー』
- 作者: 中川右介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 新書
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1934年から1955年までのクラシック界、とりわけ戦争を挟んで揺れ動くベルリン・フィルと、その首席指揮者の座を巡る争いを、多くの資料を基に歴史ノンフィクションとして纏めた一冊。ヨーロッパ現代史の縮図にもなっており、最初から最後までページを繰る手が止まらない傑作である。レコーディングを精力的に行い、ベルリン・フィルとの蜜月時代も長く、後に「帝王」と呼ばれるカラヤンだが、彼は死ぬまで「伝説の巨匠」フルトヴェングラーの影響力と戦っていたのだろう。
読みながら付箋を付けていたら、付箋が無数に付いてしまったが、中でも最も象徴的な部分を引用する。59ページ。
レコードを認めながらも、それを充分に活用できなかったフルトヴェングラー。レコードを認め、それを充分に活用できたカラヤン。そして、レコードを認めなかったチェリビダッケ。フルトヴェングラーだけが、悩み苦しむことになった。彼はどうすればいいレコードがつくれるかは分かっていた。しかし、そうしようと思えば思うほど、空回りしてしまった。そこに、それを何の苦労もなくやってしまう若い指揮者が登場した。これからはレコードの時代だという認識があればあるほど、フルトヴェングラーはカラヤンに脅威を感じたのであろう。