山田正紀『雨の恐竜』

雨の恐竜 (ミステリーYA!)

雨の恐竜 (ミステリーYA!)

恐竜の化石発掘が行われている町。ヒトミは飯島先生から、浅井先生が亡くなったという知らせを聞いた。渓谷のつり橋から落ちたらしいのだが、恐竜に突き落とされた、という説が流れていた。ヒトミにはある記憶があった。恐竜たちが歩いている記憶――恐竜が犯人であるはずがないではないか。
理論社から創刊された「ミステリーYA!」の第一回配本から。殺人事件の犯人は恐竜なのか? という発端から、過去に起こった奇怪な事件、大人の嫌らしい世界の片鱗も見せながら、本格ミステリテイストに溢れる真相が明らかになる。しかし、そこで終わらせないのが山田正紀、最後はファンタジー方面にも大きく針が振れ、少女たちの成長小説としても見事に着地させてみせる。読後に残るのは、ノスタルジーである。エラリイ・クイーンばりの名推理を披露する少年や、恐竜研究の第一人者、ヒトミたちを脅迫する大人など、個性的なキャラクターも満載。ミステリとしてもファンタジーとしても読ませる傑作。少年少女たちに是非読ませたい作品だ。
SFとミステリの世界で頂点を極めた山田正紀は、今度はジュニア小説の世界を極めてしまうかも知れない。