芦原すなお『カワセミの森で』

カワセミの森で (ミステリーYA!)

カワセミの森で (ミステリーYA!)

これは傑作である。
中盤までは事件らしいことは何も起こらず、語り手ミラと、転校生サギリを中心とした学園小説が延々繰り広げられるのだが、サギリの別荘にみんなで行ってから、突如として連続殺人が起こる。ある場面から、ただのサイコホラーに落ちるのでは、と思っていたが、全く違って驚かされた。伏線もかなりあからさまな形で張られている。そしてジュブナイルとは思えないほど重い動機と、感動的なラスト。大人が読んでも充分楽しめ、子どもが読めば活字中毒者へのきっかけとなるかも知れない。具体的に言うと、エドガー・アラン・ポーが読みたくなる。(何故かは読めば分かる)
本書は理論社「ミステリーYA!」シリーズの中でも読まれていない部類にあたる作品だろうが、もったいないことだ。是非読んでいただきたい。