桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

1919年、パリから日本に来た聖マリアナによって設立されたお嬢様学校・聖マリアナ学園で、異形の少女たちが集う「読書クラブ」。これは、学園で起こった100年に亘る裏事件を「読書クラブ」の匿名の少女たちによって書き継がれた物語である。


こりゃ、すごいな。
女学園の「黒歴史」の物語集で、荒唐無稽な話ばかりだが、それが桜庭一樹の手にかかると、どんなに荒唐無稽でも許せるし、笑ってしまう。「烏丸紅子恋愛事件」での紅子が学園を去るシーンなどは鳥肌が立ってしまった。これは映像化に向いている。聖マリアナにまつわる事件も「美しい儚さ」を感じさせるし、そしてバブリーな三人娘のクーデターとか人間椅子ばりの文芸ロックバンドの話とか、もうなんだか可笑しすぎ。「少女キャパ」もカッコいいし、物語の書き手たち(「消しゴムの弾丸」「両性具有のどぶ鼠」)などのネーミングも気になる。
桜庭一樹の「騙り」の力を実感する小説であり、もっともっといろんなエピソードが読みたい、と思わせてくれるだけで、本書は素晴らしい作品である。『少女には向かない職業』→『ブルースカイ』→『少女七竃と七人の可愛そうな大人』→『赤朽葉家の伝説』→本書と、どんどん成長している作家だ。