霧舎巧『新本格もどき』

新本格もどき (カッパ・ノベルス)

新本格もどき (カッパ・ノベルス)

新本格推理作家の代表作を模したパロディ短編集。タイトルだけで元ネタが全て分かる人向け。まあ、分かりますよね?(ここをご覧の皆さんなら)

事件の内容も含め「もどき」の完成度には多少上下はあるが(作品によってはぐだぐだになったり)、新本格世代なら普通に楽しめるはず。目張り密室トリックが面白い「人形は密室で推理する」と、「星降り山荘の殺人」の設定と猫丸先輩風な奇妙さが上手くブレンドされた「雨降り山荘の殺人」、様々な小ネタを詰め込むだけ詰め込んだ「13人目の看護師」あたりをお薦めしたい。
よく考えてみれば、霧舎巧は普段から「もどき」を作風にしている気がする。《あかずの扉研究会》シリーズはまさに「新本格もどき」だし、霧舎学園シリーズは「ラブコメもどき」、『名探偵はもういない』のシリーズだって、ある登場人物が「もどき」だったりするし。そういう意味でも、いかにも霧舎らしい短編集といえるだろう。