笹公人『抒情の奇妙な冒険』
- 作者: 笹公人
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/03/20
- メディア: 単行本
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詠み手を四十代半ばと想定して、昔の思い出をノスタルジックに詠んだシリーズから、最近の時事ネタ、SFネタまでを網羅している。かつて俵万智『サラダ記念日』が大ヒットした頃、斬新な短歌に衝撃を受けたが、女性心理を描いたものが多かったので共感できるかというとそうでもなかったことを憶えているが、こちらはツボど真ん中だ。特に好きなものをいくつか引用してみる。
「タイガーバームまぶたに塗ればひりひりとあの六月の夜の雨音」
「持ち出した箪笥を黒に塗りたくりYMOを演(や)る文化祭」
「収録を終えたる川口浩らが首狩り族と居酒屋に消ゆ」
「有終の美とはつまりステージにマイクを置き去る百恵の姿」
「灰色の埃ぬぐえばトシ・マッチ・聖子の微笑む『明星』あらわる」
「C−C−Bのヘアスタイルであらわれし鈴木健二の気くばりあわれ」
「憧れは999(スリーナイン)の食堂で銀河を見つつ食べるビフテキ」
「ミクシィは二時間以内に控えよと守護霊辰乃進は申せり」