島田荘司ミステリー朗読会

26日に福山市中央図書館(まなびの館ローズコム)にて開催された、ミステリー朗読会「ミステリーへの招待」に行ってきました。
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/bungakukan/koumori/list.php?bst_rec=49
島田荘司氏が選考委員を務めている「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」関連事業として、島田氏の作品を俳優の金田賢一氏が朗読する、というイベントでした。
イベントに先立って、直前に記者発表されたばかりの、「福ミス」第一回目の受賞者の紹介もありました。
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/bungakukan/koumori/list.php?bst_rec=48
朗読作品は、ショートショート作品「数字のある風景」と、未発表の御手洗もの短編「ダージリン」の二編。素晴らしい朗読でした。


朗読の後、島田氏と金田氏のトークセッションがありました。メモからいくつか印象的な部分を紹介します。

金田賢一氏が島田荘司を読むきっかけは、なんと伊東四朗。「最近面白い小説を読んだ」と、『占星術殺人事件』を薦めてくれたが、行った書店では売り切れていたので、同じ作家の作品で『異邦の騎士』を読んだ。それから数作読むうちに、惹かれるものがあって、いきなり電話したそうだ。それ以来の親交があるらしい。
・ミステリにはそれに相応しい街の雰囲気がある。ハードボイルドは西海岸が似合っているし、切り裂きジャックは霧の立ち込める街だからこそ相応しい。(島田氏)
・二時間ドラマの脚本は本来短編くらいの分量しかできない。「数字のある風景」のようなショートショートでも二時間に出来る。しかし求められるのは大作なので、結局かなり端折ったドラマになってしまう。(島田氏)
・初めて御手洗役を朗読の形で演じたが、プレッシャーがあった。ファンにはそれぞれの御手洗像があるので、そのイメージを壊してしまわないか危険だった。(金田氏)→違和感はなかったですよ。(島田氏)
・朗読は数分が本来の限界。「数字のある風景」はどんなに頑張っても7分までしか縮められなかった。ところが「ダージリン」は普通に読んでも28分あった。大変だった。聴く方も大変だったと思う。(金田氏)
・(入れ子構造の作品が多いが、の質問に)入れ子構造の作品は必ずしも順序通りには書いていない。まず入れ子の中のものから書いて、外堀を書くこともある。『ネジ式ザゼツキー』はその一例。(島田氏)
・(達成感を得るのはどんな時か、との会場の質問に)意外に思われるだろうが、書き終えて眠って、朝起きて、昨日の文章を直す時。「ああ、直せる文章がある」と安堵する。(島田氏)→小説は、直せるんですよね。我々は撮ったらもう直せないんですよ。(金田氏)
・「ダージリン」の作品世界は、御手洗が石岡に出会うずっと前に、世界を放浪していた頃の回想という設定。「戦争遺跡」が舞台になっている。回想なので、物語は喫茶店の中だけで語られるが、そこから世界中を飛び回っているイメージ。いずれ単行本化する予定。(島田氏)

島田荘司氏は本当に本気で「ミステリーで福山の知名度を上げたい」と思っています。最初に「福山ミステリー文学新人賞」の構想を講演会で聞いたときは、ちょっと絵空事のようで現実味はないなあ、と、地元民である私ですら思っていましたが、島田氏はあくまでも本気だったようです。そしてそれを現実にさせる力が、今の島田氏にはあるのでした。この姿勢・情熱には、感服するしかありません。素晴らしい活動だと思います。