NHKスペシャル・沸騰都市第5回「ヨハネスブルク・“黒いダイヤ”たちの闘い」

沸騰都市・後半シリーズ。1月25日に放送されました。ナレーターが宮迫博之に替わったのが残念。

 アパルトヘイト撤廃から15年。南アフリカは豊富な鉱物資源を元に急成長を遂げ、それらが黒人層に降り注いでいる。「黒いダイヤモンド」と呼ばれる黒人の富裕層が続々登場。しかし今、世界的金融危機が、彼らに試練を与えようとしている。

 ここ数年、5%近い経済成長を続けてきた南アフリカは、黒人への優遇策によって、黒人層にも裕福な人たちが増えてきた。その成長を担っているのが、鉱物資源。例えばマンガンは、世界の埋蔵量の80%が南アフリカにある。かつてはその権利も白人が握っていたが、現在では黒人の優遇策によって、黒人層の経営者も増えてきた。
 あるマンガンの鉱山の経営権を持つ女性もそんな一人だが、金融危機によってマンガン価格が下落しており、今は苦しんでいる。彼女はかつて、反アパルトヘイトの闘士として、政府からも恐れられていた。今では政府とも強いパイプで結ばれている。株主となった人たちに巨額の配当金を与えたことで世界的に有名となった。

 アパルトヘイト時代、黒人層が追いやられていた地区に、初のショッピングセンターができた。センターは大盛況だ。その経営者もまた黒人で、アパルトヘイト撤廃後の社会のカリスマ的存在だ。彼もまた、反アパルトヘイト運動の闘士だった。彼はマンデラ元大統領と共に闘っていた。マンデラ氏の支えがあるからこそ、今の自分がある、と彼は感謝している。

 今、最も注目を集めるのは、来年行われるサッカー・ワールドカップだ。各地でスタジアムの整備が進んでいる。黒人街ソウェトでも2つのスタジアムが建造中だ。
 ワールドカップに向けて、新しいビジネスを始めている黒人たちもいる。スタジアム周辺の整備を進めている若手経営者もいる。彼はホテル建設のため、資金調達に必死で動いている。金融危機の中、タイムリミットは近い。
「こんなに世界が変わるのを間近に見ることができて、勇気づけられます」アメリカのオバマ大統領誕生のニュースを見ながら、彼は言った。

 ソウェトのサッカースタジアムのすぐ脇には、スラム街もある。貧困層アパルトヘイト時代よりも増えており、失業率も高い。アパルトヘイト時代、黒人たちは一丸となって敵と闘っていた。しかし、それが無くなった今、裕福になった黒人と貧困層との間の格差も大きくなったのだ。貧困層の怒りは、沸点に達している。

 南アフリカに流れる中国人も急増している。安い中国製品がヨハネスブルクを通じて、アフリカ中に流れているのだ。インドのタタ・グループも南アフリカ向けに新車を発売した。アフリカ市場の拠点を狙って、新興国の企業が入り込んでいる。

 しかし、金融危機の波は、南アフリカにも流れてきている。マンガン鉱山の女性経営者も資金調達に苦しんでいる。ショッピングセンターの経営者も、モーターシティ建設という、新たな事業が進行していない。ホテル建設を計画している経営者も、まだ資金が集まっていない。

 世界最悪の犯罪都市と呼ばれるヨハネスブルク。犯罪の発生率は、日本の50倍と言われる。ワールドカップ開催すら危ぶまれていた。政府は防犯体制の整備を続けている。特に最近は、黒人同士の犯罪が増えている。貧しい黒人が、金持ちの黒人を襲うのだ。黒人富裕層の住む街には、警備員が24時間体勢で見回りをしている。
 アパルトヘイト時代は一枚岩だった黒人たちに、大きな亀裂が生まれている。かつての同じ思いを取り戻そうではないか。牧師はオバマ米大統領の言葉「変革」を引用しながら、皆に訴えている。

 来年6月11日、ソウェトのスタジアムで、ワールドカップのオープニングゲームが行われる。その頃にはもう、スラム街はなくなっている予定だ――。


次回第6回は、サンパウロです。2月1日21:00〜。是非ご覧ください。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090201.html