小谷野敦『『こころ』は本当に名作か』

『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

古今東西の名作文学を完全独断でメッタ斬っている。
個人的な主観を前面に出してくるので、時折クセのある発言にぶち当たる。これらを面白いと思うか、反発するかで、引いては小谷野敦という著者(ちくま新書もてない男』で有名)に対する読者の評価も変わってくるだろう。

「新訳というものは、それほど画期的な出来事なのか、というのが私の年来の疑問である。」(41ページ)
漱石小林秀雄を同様に尊敬する人間というのは、自己欺瞞に陥っているか嘘つきかのどちらかだと思う。」(163ページ)
「しかも、一般の日本人は「きんかくじ」という音から「金隠し」を連想してしまう」(206ページ)←そうかなあ?
佐野洋子の『100万回生きたねこ』(講談社)を私は評価しない。なぜならこれは、この世界に自分のためのたった一人の異性がいるという、近代的恋愛思想を表現したもので、私はそういう思想はリアリティーがなく、害悪だと考えているからである。(213ページ)