乾くるみ『蒼林堂古書店へようこそ』

蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)

蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)

徳間書店さんからいただきました。ありがとうございました!
林真紅郎(『林真紅郎と五つの謎』)、林茶父(『六つの手掛り』)に続く、林兄弟(あれ、兄弟だったっけ?)の三人目、林雅賀が登場。「マクローリン」「チャップリン」の次は「ガガーリン」ですなあ。
林雅賀はミステリ評論家もやりながらミステリ専門の古書店「蒼林堂」を経営している。いつも常連さんが珈琲を飲んでいる(200円以上の購入か100円以上の買取で珈琲のサービスがある)ところにに、月に一度だけ訪れる茅原しのぶが、ちょっとした謎を持ってくる――。


謎そのものは「日常の謎」系、いや、謎というには軽すぎるネタが多い。そこは物足りなく思うだろうが、不可思議な日常の謎なんてそうそう転がってないよ、という皮肉にも見える。
古書店が舞台だけあって、前半では必ずミステリについての薀蓄が語られるのが、ミステリマニアには嬉しい趣向。いきなり石沢英太郎の話題から始まるのだ! さらに各編のラストでは、本編中に登場する作品を「林雅賀」が解説するページまである。
そして最後の趣向。いやまあ、大体こういう展開だろうなあとは思ってましたが、うーん巧い。そして綺麗な終わり方でした。最終話の本当の結末は解説ページの最後の一行にあるあたりもニクい。いや、いいものを読ませてもらいました。


ある短編で、マスター(林)が

「僕の同業者で円堂都司昭って人がいるんですけど、」

と実名を挙げるところでニヤニヤしてしまった。

ミステリとして期待されるとちょっと困るけど、読み物としては、お薦めです!