今年のベスト本3冊

どうもご無沙汰しております。もう年末ですので、今年読んだ本から、「一般小説」「ミステリ」「ノンフィクション」の3部門から一作品ずつ、今年のベスト本として紹介します。


一般小説部門
百田尚樹海賊とよばれた男』(講談社

海賊とよばれた男 上

海賊とよばれた男 上

海賊とよばれた男 下

海賊とよばれた男 下

作者の言動その他諸々には、苦々しく思うところもあって決して好きな作家さんではない。が、作家と作品は別物で、本当に素晴らしい作品はきちんと正しく評価すべきだと思う。今まで読んできた作品には不満点も多かったが、これは本当に素晴らしかった。小説技巧や文章力では劣る点もあるだろう。しかしその不器用さが逆に本書の作品世界にマッチした。このご時勢にこそ読まれるべき作品であり、日本と日本人が忘れてしまったもの、そしてこれから進むべき道を示してくれているように思える。




ミステリ部門
横山秀夫『64』(文藝春秋

64

64

他にも素晴らしい作品は多かったが、総合力では『64』を上回る作品はなかった。全ての登場人物にも愛ある視線で描く物語、警察小説としての素晴らしさ、そして驚愕の本格ミステリにもなっている意外性。
今、「何かお薦めの小説ありませんか?」と訊かれたら、迷うことなく本書を挙げるようにしている。
本書については版元のフォローも絶賛したい。かなり前から煽り、販促し、プルーフをたくさん配ったらしい。そして観想を書いた書店員へのアフターケア。つい先日だが、横山秀夫さん直筆の「お礼の手紙」と直筆色紙をいただいた。文春としてはかなり異例の宣伝活動だと思う。AKBヲタとして文春にはいろいろ言いたいことがあるが、それとこれとは別問題である。




ノンフィクション部門
アンドレア・ウルフ『金星を追いかけて』(角川書店

金星を追いかけて

金星を追いかけて

18世紀の「金星の太陽面通過」を観測するための世界プロジェクトの話だ。その50年も前にこの現象が起こることを予測し、その重要性を訴えて世界の天文学者に観測を呼びかけたエドモンド・ハレーもすごいし、それに世界の科学者が挑んだのも素晴らしい。数多くの犠牲を払いながら、世界の科学者が一致団結したプロジェクトによって、天文学のみならず、世界の科学技術と航海術の進歩に繋がった。たったひとつの天文現象が人類を進化させたのである。