2016年1月1日に「青空文庫」から公開される江戸川乱歩作品はこれだ!

まもなく2015年も終わりますね。しみじみ。
そしてあっという間に新年、2016年がやってきます。
そして私が毎年、元日の更新を楽しみにしているサイトがあります。青空文庫です。
青空文庫 Aozora Bunko


ご存知、著作権フリーになった作家の作品の電子化をすすめ、公開しているサイトです。パソコンはもちろんのこと、スマホ等でもフリーのアプリで読むことができます。


ところが今年、TPPが大筋合意したことによって、著作権保護期間も変わることになったことをご存知でしょうか。なぜか輸出入品関連の報道しかないのであまり知られていませんが、著作権の保護期間が今までの「作者の死後50年」から「作者の死後70年」に延長してしまったのです。これはもしや、来年から著作権フリーになる作家に影響するのでは? と不安で仕方ありませんでした。


でも安心してください。来年はちゃんとフリーになりますよ。


著作権保護期間の延長は、いきなりすぐ始まるのではなく、いろんな準備期間を経てから適用されるようです。その準備には1〜2年程度かかると言われており、2016年についてはとりあえず大丈夫。しかも著作権保護の延長が施行されても、その時点で既にフリーになっている作家まで遡っての適用はなさそうなので(まだ予断を許さないようですが、法律的には不遡及が一般的のようです)、フリーになったけどまた保護されて、公開できなくなる、ということもなさそうです。よかったですね。


(ただ、著作権保護延長が施行されてから確実に死後50年を迎える作家の作品については、残念ながらまだ20年待たなければいけなくなりましたが……。直近でその影響を受けそうな著名作家は、例えば三島由紀夫川端康成などです)


というわけで2016年は、1965年に死去した作家の作品がフリーになり、青空文庫でも読めるようになります。来年フリーになる作家では超大物が二人いるのですよ。江戸川乱歩谷崎潤一郎です。


さて、青空文庫では「作業中の作品」の一覧を公開しており、間もなく著作権フリーになる作家の作品についての進行状況も分かるようになっています。早速確認してみると、江戸川乱歩は76作品、谷崎潤一郎は36作品が作業中とのこと。さらに見ると、作品ごとの進行状況も分かり、どの作品が校了して公開待ちかまで分かります。
乱歩の項目では、

押絵と旅する男」「怪奇四十面相」「怪人と少年探偵」「怪人二十面相」「心理試験」「随筆銭形平次」「D坂の殺人事件」「二銭銅貨」「日記帳」「人間椅子」「パノラマ島奇譚」「ふしぎな人」「指輪」

校了すみ。栄えある元日公開作品は「二銭銅貨」になるようです。
作業中 作家別作品一覧:江戸川 乱歩


谷崎潤一郎は「陰翳礼讃」「鍵」「刺青」「春琴抄」「吉野葛」などが校了すみ、春琴抄」が元日公開になります。
ミステリファン的には、大坪砂男も楽しみですね。4作品が作業中で、「浴槽」が元日公開になるようです。


補足ですが、著作権フリーになったらタダで読めるから、書店的にはダメージでは? と思われがちですが、案外そうでもないと思います。保護されていない分、出版社にとっても出しやすくなり、読者に届きやすくなります。サン=テグジュペリ星の王子さま』の著作権が切れてから、たくさんの出版社から様々な翻訳者の手で翻訳・出版されたことも記憶に新しいところです。
乱歩についても、2016年2月に文春文庫から乱歩の傑作選が出るようですし、今後も出版機会が増えると期待しています。(逆に、以前記事にも書いたリブレ出版版は、よく保護期間内で出版許可をもらったものだと感心してしまいますが)